体力医学研究所

Physical Fitness Research Institute

時代の先駆けとなる健康課題を捉えた研究活動を行い、知見の普及啓発を行っています。

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研究所ニュース

第72回日本体力医学会大会レポート

 9月に松山大学で開催された日本体力医学会で、研究成果を発表しました。

名称:第72回日本体力医学会大会
日時:2017年9月16日(土)~18日(月)
会場:松山大学(愛媛県)

レポート:永松俊哉

シンポジウムの座長と演者を務めました。

テーマ: 運動とメンタルヘルス-ライフステージに応じた運動の活用策を探る- 座長: 永松俊哉(明治安田厚生事業団 体力医学研究所)
朽木勤(兵庫大学)

 メンタルヘルスに及ぼす運動の影響を考える場合、対象特性として年齢を考慮することは有効性や実用性を期する上で重要と思われます。そのような観点から、本シンポジウムではライフステージに着目し、児童期、青年期、壮~中年期、老年期に分けて運動の効用を検討し、メンタルヘルス対策として有効な運動のあり方について各シンポジストより具体策を提言していただくために企画しました。
 壮~中年期はいわゆる働き盛り世代であり、我が国の職域メンタルヘルス一次予防策としては、飲酒、喫煙、食事、睡眠の改善とともに、運動の効用にも関心が寄せられています。そこで、職域メンタルヘルス対策としての運動・身体活動の効用について概説するとともに、当研究所でこれまで実施してきた観察研究および介入研究の内容を紹介しました。今後は産業保健と企業経営の両面からの要請に応えうる日本人を対象としたエビデンスの蓄積が肝要と思われます。

 シンポジストとしてご登壇いただいた征矢英昭先生(筑波大学)、藤本敏彦先生(東北大学)、大蔵倫博先生(筑波大学)には改めて御礼申し上げます。本シンポジウムがメンタルヘルス研究を推進し、広く国民の健康づくりの一助になれば幸いです。

永松俊哉

レポート:甲斐裕子
「座位行動は勤労者のメンタルヘルスに影響するか?」

甲斐裕子

 私たちの生活は便利になり、仕事でも自宅でも座りすぎの人が増えています。座りすぎの人は、たとえ運動していたとしても、生活習慣病や癌などになりやすいことがわかってきました。一方、座りすぎがメンタルヘルスに与える影響は、まだわかっていません。そこで、新宿健診センターの約4,000名の受診者のデータを分析し、その結果を発表しました。仕事中に座っている時間が長い人は、2年後にメンタルヘルスが悪化するリスクが約2倍であることがわかりました。しかし、仕事以外で座っている時間は、メンタルヘルスに影響しませんでした。

レポート:須藤みず紀
「自発的な運動を促す豊かな環境は不安感情様の低下と骨格筋量の増加を惹起する」

須藤みず紀

 身体活動を促すような飼育環境を設定した上で長期間の動物飼育を実施した結果、不安感の抑制が示唆されました。さらに、後肢骨格筋の肥大が観察されました。身体活動が、感情のみならず筋肉にも同時にポジティブな効果を及ぼした興味深い結果となりました。

レポート:兵頭和樹
「高齢者の最大下有酸素能力と作業記憶能力の関係」

兵頭和樹

 加齢による認知機能の低下には個人差が大きく、高齢期において認知機能と関連する因子に注目が集まっています。最近の研究で持久力は認知機能と関連することが報告されていますが、未だにその関係性は不明な点が多くあります。そこで、本研究では前頭前野が担う認知機能である作業記憶能力(一時的に物事を記憶する能力)と持久力の関係性を検証しました。その結果、持久力の高い高齢者は言語性の作業記憶課題の成績が高いことがわかりました。今回の結果から、高齢期において作業記憶能力を維持するためには日常の活動量を増やしたり、運動を定期的におこなうことで持久力を維持することが重要かもしれません。今後は、なぜ持久力の高い高齢者は作業記憶能力が高いのかに関して、その脳内メカニズムを探っていきたいと考えています。

「運動は高齢者の意志力を高めるか―実行機能に着目して―」

 高齢期における運動実践は、前頭前野が担う認知機能である実行機能(目標に向かって行動や感情をコントロールする能力)を高めることが報告されています。しかし、運動が実行機能を高める脳内メカニズムは不明な点が多くあります。そこで私たちは、光を用いたニューロイメージング技術である近赤外線分光法を用いて、運動が高齢者の実行機能に与える効果の脳内メカニズムを検討してきました。これまでの研究で、①一過性の中強度運動による実行機能向上には、左脳の機能低下を代償する右前頭前野の活性化が関連することや、②持久力が高い高齢者は、若者型の左半球優位の脳活動を保ち、高い実行機能を発揮できること、そして③運動トレーニングによる実行機能の向上には右前頭前野の活動低下が関与する可能性を明らかにしてきました。これらの結果から、一過性の運動は前頭前野の代償的な脳活動を一時的に高めますが、継続的・反復的な運動実践は若者型の効率的な神経活動を促進させることで実行機能を高めることが考えられます。

兵頭和樹

レポート:北濃成樹
「勤労者における身体活動強度や実践時間帯と主観的睡眠の質の関連性」

北濃成樹

 日本で行われた大規模な調査から、働く人の約3人に1人が睡眠に何らかの問題を有していることがわかっており、勤労者の睡眠の問題を解決することは重要な課題と考えられています。これまでの研究から、運動などによって体を動かすと睡眠の質が高まることはわかっていますが、「いつ、どれくらいの強度で体を動かすと効果的か」は不明です。そこで、今回、都内のデスクワーカー99名を対象に、3軸加速度計による日々の身体活動量の調査と、質問票による睡眠の調査を実施しました。分析の結果、勤務日は午前中や夜に高強度の活動(息が切れるくらいの強度)を行っている者は、寝つきがよく、中途覚醒の少ない良好な睡眠を得ていることがわかりました。また、勤務日午後の低強度の活動(軽いストレッチやデスク周りを歩くなど)は日中の眠気の低さと関連しました。休日では、夜に高強度の活動を行っている者は良好な睡眠が得られていました。最近は「朝活」「夜活」「24時間営業のジム」なども普及しているので、働いている人はこうした活動を有効活用することで、良質な睡眠を得られるかもしれません。

レポート:神藤隆志
「男子高校生における過去および現在の運動・スポーツ活動と気分の関連」

神藤隆志

 青年期における運動部やスポーツクラブなどのスポーツ組織における活動は、メンタルヘルスの維持・改善に有効であることが報告されています。しかし、我が国では高校進学に伴いそれまで所属していたスポーツ組織への所属をやめてしまう生徒が多く見られます。習慣的な運動・スポーツを中断するとメンタルヘルスが悪化する可能性がありますが、高校生では時間的拘束などの理由によって組織への所属が難しい場合があります。そこで本研究では、高校で組織への所属を中断したとしても、運動・スポーツを自主的に継続することで気分が良好に維持されるのかという点について男子高校生を対象に検討しました。その結果、スポーツ組織への所属を継続している生徒と同様に、組織に所属せずに自主的に運動・スポーツを継続している生徒も気分が良好な状態であることが明らかとなりました。今後も引き続き、高校生の自主的な運動・スポーツ実践(例えば、ジョギングや筋力トレーニングなど)のメンタルヘルスへの有効性について検討していきます。

更新日:2017年10月30日

公的研究費ならびに研究活動の管理について

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