研究活動

コアスタディー「運動とメンタルヘルス」

概要

 「運動」を活用して健康に関わる諸問題の解決を目指す中長期的な研究活動を「コアスタディー 」と称し2006年に開始しました。目下、精神的健康(いわゆるメンタルヘルス)の維持増進に関する研究を推進しています。


 

研究テーマ

基礎研究 (生理学・神経科学的アプローチ)

  1. 運動が脳内神経伝達物質の分泌および気分変容に及ぼす影響
  2. 運動経験と脳構造との関係
  3. 運動トレーニングが情動刺激時の脳賦活および抑うつ度に及ぼす影響
  4. 運動トレーニングが脳構造に及ぼす影響

実践研究 (公衆衛生学・疫学的アプローチ)

  1. 行動変容プログラムが心身の健康増進に及ぼす影響
  2. 職域における運動実践支援策の検討
  3. 運動と職業性ストレスとの関係
  4. 女性勤労者における心身の健康づくり運動プログラムの開発
  5. 高齢者のうつ予防のための運動プログラムの開発
  6. 未成年者の心身の健康と運動との関係

 

研究業績

基礎研究

  1. 永松俊哉、北畠義典、泉水宏臣. 低強度・短時間のストレッチ運動が深部体温、ストレス反応、および気分に及ぼす影響. 体力研究. 110, 2012(印刷中)
    要旨:10分間の軽いストレッチが心身にどのような影響を及ぼすのか、睡眠やメンタルヘルスとの関係が指摘されている体温、ストレス反応、気分の変化について中高年女性を対象に検討しました。ストレッチによって体温は僅かに上昇し、ストレス指標である唾液中コルチゾールは低下し、爽快感など「快感情」が増加しました。このことから、軽いストレッチでも睡眠やメンタルヘルスの維持改善に役立つ可能性が示唆されました。
  2. 柳澤弘樹, 永松俊哉, 甲斐裕子. ストレッチ運動が気分と局所脳血流に与える効果. 体力研究. 110, 2012(印刷中)
    要旨:低強度の運動としてストレッチに着目し、ストレッチ運動の実施が気分および脳活動に及ぼす効果について検討しました。ストレッチ運動による気分変化を運動前後で比較したところ、快感情因子およびリラックス因子は運動後に得点が増加しました。不安因子は、運動後に得点が減少しました。ストレッチは気分を改善することが明らかとなりました。
  3. 泉水宏臣, 今村弥生, 藤本敏彦, 永松俊哉. 課題達成型のダンス運動が健常者および統合失調症患者の気分に及ぼす効果. 体力研究 105: 11-16, 2007
    要旨:健常者や統合失調症患者を対象に、課題達成型の運動としてヒップホップダンスを、また、特に課題を設けない運動として歩行運動をそれぞれ実施し、運動非実施(ビデオ鑑賞)時と気分の変化の違いを比較しました。その結果、健常者の場合はダンス運動と歩行運動のいずれも「生き生きしている」といった快感情が向上しました。また、統合失調症患者では、ダンス運動で快感情が向上することが示されました。

実践研究

  1. 甲斐裕子,永松俊哉,山口幸生,徳島了. 余暇身体活動および通勤時の歩行が勤労者の抑うつに及ぼす影響. 体力研究. 109:1-8, 2011
    要旨:余暇および通勤での身体活動が,日本人勤労者の抑うつ傾向に及ぼす影響を明らかにするために縦断調査を行いました。その結果,余暇で運動不足の群と比較して,余暇での身体活動が活発な群は1年後の抑うつ発生のリスクが約5割少ないことがわかりました。一方,通勤での歩行時間の多寡は抑うつ傾向の発生に影響していませんでした。勤労者の抑うつ対策には,まずは余暇における身体活動の促進が有益かもしれません。
  2. 泉水宏臣,肥田裕久,藤本敏彦,永松俊哉. 精神疾患患者への運動療法‐デイケア施設における実践からの提言‐. 体力研究 109:9-16, 2011
    要旨:精神科デイケア施設で実施した運動プログラムの効果を検証しました。その結果、運動プログラムに参加した患者は、そうでない患者と比較して精神科症状や自己効力感に改善がみられました。また、どのような種類の運動でも感情状態を改善することができ、うつ病患者、統合失調症患者ともに運動によって感情状態が改善されることが示されました。
  3. 永松俊哉, 鈴川一宏, 甲斐裕子, 須山靖男, 松原功, 植木貴頼, 小山内弘和, 越智英輔, 若松健太, 青山健太. 青年期における運動部・スポーツクラブ活動がストレスおよびメンタルヘルスに及ぼす影響-高校生を対象とした15ヵ月間の縦断研究-. 体力研究. 108:1-7, 2010
    要旨:青年期における運動部・スポーツクラブ活動とストレス・メンタルヘルスとの因果関係を検討するために、男子高校生を対象に気分、ストレス反応、運動に関する課外活動状況について縦断調査を行いました。その結果、男子高校生が運動部での活動を継続的に行うと、ストレス解消、抑うつ感や疲労感の軽減に繋がり、総じてメンタルヘルスの保持増進に役立つことがわかりました。
  4. 北畠義典, 青木賢宏,杉本淳, 永松俊哉. 低強度・高頻度の運動プログラムが不眠感を有する女性高齢者の睡眠に及ぼす影響-ランダム化比較試験-. 体力研究. 108:8-17, 2010
    要旨:主観的に睡眠に不満を持ち、現在服薬(睡眠薬など)のない65歳以上の女性高齢者に対する低強度・高頻度(毎日)の睡眠改善運動プログラムの効果を検討しました。教室参加群は、1か月間、毎週1回90分の教室参加時に学んだ、歩き方(日中20分の散歩)とストレッチ体操(就寝前の5~10分)を毎日実施しました。簡易型睡眠計と自記式調査の結果から本プログラムは睡眠に不満を有する集団に対して、寝つづけられることを可能にし、そのことが全体の睡眠感を改善することが明らかとなりました。
  5. 甲斐裕子, 永松俊哉, 志和忠志, 杉本正子, 小松優紀, 須山靖男. 職業性ストレスに着目した余暇身体活動と抑うつの関連性についての検討. 体力研究,107:1-10, 2009
    要旨:40歳以上の男女勤労者を対象に、余暇身体活動と職業性ストレス、抑うつ傾向の関係を検討しました。その結果、職業性ストレスが低い場合は、余暇身体活動量の多寡と抑うつ傾向は関連しませんが、職業性ストレスが高い場合は、余暇身体活動が多いグループでは抑うつ傾向者が少ないことが認められました。つまり余暇における身体活動の実施は、職業性ストレスの緩衝作用を持つ可能性があることが示唆されました。
  6. 永松俊哉, 鈴川一宏, 甲斐裕子, 松原 功, 植木貴頼, 須山靖男. 青年期における運動・スポーツ活動とメンタルヘルスとの関係. 体力研究,107:11-14, 2009
    要旨:青年期における運動・スポーツ活動とメンタルヘルスとの関係を検討するために、男子高校生を対象に気分、運動に関する課外活動状況とそのソーシャル・サポートについて調査しました。その結果、運動やスポーツの積極的な実施は青年期のメンタルヘルスの維持向上に寄与すること、その際には運動・スポーツ活動を円滑に進めるためのソーシャル・サポートが関与することが示されました。
  7. 永松俊哉, 甲斐裕子, 北畠義典, 泉水宏臣, 三好祐司. ストレッチを用いた低強度運動プログラムの実施が中高年女性勤労者の睡眠に及ぼす影響. 体力研究,106:1-8, 2008
    【要旨】本研究では、中高年女性勤労者の睡眠改善のための運動プログラムを開発し、その効果検証を行いました。対象は40~66歳の勤労女性40名でした。運動は、肩こりや腰痛をやわらげるストレッチとし、3週間に渡り就寝前に毎日10分間実施するというものです。参加者は多忙な生活の中、週5日以上運動を実施していました。その結果、この運動プログラムは寝つきをよくする効果のあることがわかりました。
  8. 北畠義典, 石黒友康, 武井圭一, 永松俊哉. 地域在宅高齢者に対する運動を主体としたうつ予防プログラムの開発. 体力研究, 106:9-19, 2008
    要旨:高齢者の基本健康診査時に生活機能調査として実施されている基本チェックリスト(厚労省)は抑うつ状態の評価を可能とします。本研究では、この調査でうつ傾向にあると判断された高齢者を対象に、3ヵ月間、低強度、高頻度(毎日)での運動プログラムの実践を依頼しました。その結果、うつレベルそのものの改善には至らなかったものの、抑うつに関係すると考えられる包括的な心身の健康度が改善することが示されました。
  9. 甲斐裕子, 荒尾孝, 丸山尚子, 今市尚子. 行動変容型プログラムと知識提供型プログラムの身体活動促進効果の比較:無作為化比較試験. 体力研究,105:1-10, 2007
    要旨:身体活動を高めるための行動変容プログラムを開発し、心身の健康増進に及ぼす効果を検証しました。本プログラムは行動科学にもとづき、月1回2時間、4ヶ月実施されました。40~70歳の男女100名を本プログラム群と一般的な講義や実習を行う群とに無作為に分けました。その結果、本プログラムは一般的な講義や実習に比較して身体活動が高まり、抑うつ状態の変化はなかったものの肥満が改善することが示されました。