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健康づくりウォッチ

どこでもできる手軽な筋トレ法~スロートレーニング~

筋肉量が減ると歩く速度が低下し転びやすくなるなど、日常生活にも大きな影響を及ぼします。筋肉を維持するにはどのような運動が効果的なのでしょうか。

筋肉量や筋力のアップには高負荷の筋トレが効果的ですが…


筋力トレーニングで筋肉量を増やし、筋力を高めるには「重さ」つまり「負荷」が重要で、「最大筋力の70~80%程度の負荷・最大反復を3セット以上・週2回以上の頻度」という条件が推奨されています。高齢者の筋トレでも負荷は重要ですが、負荷が大き過ぎるとケガや過度の血圧上昇が懸念され、本格的な筋トレは手軽にできないのが現状です。

健康増進や介護予防のための筋トレでは、安全性や有効性に加えて「どこでも取り組める」という汎用性がとても重要です。そのため、身体への負担を軽減しつつ筋機能の向上を図る工夫と特別な器具を使わない方法が求められます。

軽い負荷でもしっかり効く筋トレ法「スロートレーニング」


「スロートレーニング」とは、ゆっくりした速度で行う筋トレの総称です。今回ご紹介するのはスロートレーニングの中でも「筋発揮張力維持スロー法」と呼ばれる方法で、鍛える筋肉に力を入れたままゆっくり、滑らかに動作するのが特徴です。そうすることで、最大筋力の50%程度の軽い負荷でも、重い負荷で行う通常の筋トレと同程度の効果が得られることがわかっています1)。また、スロートレーニングでは急な動作がないので、関節にかかる負担も小さくなり、重い負荷の筋トレに比べて、運動中の血圧上昇も低く抑えられます1)
1) Tanimotoら, Journal of Applied Physiology (2006)


私が行った研究では、健康な高齢者をスロートレーニング群と通常の筋トレ群に分け、低負荷の膝伸展運動(13回×3セット、週に2回)を実施しました。12週間後、スロートレーニング群では大腿四頭筋(太もも前側の筋肉)が平均で5.0%増えました(図)2)。ところが、通常の筋トレ法では筋肉量に大きな変化はありませんでした。ゆっくり丁寧に筋トレを行うことで、最大筋力の30%という極めて軽い負荷でも筋肉量が確かに増えることが明らかになりました。

スロートレーニングをスクワットやプッシュアップなどの自体重(自分の体重を利用した)エクササイズに応用すれば、特別な器具がなくても、安全で効果的な筋トレを実施できます。ただし、スロートレーニングは決して楽な運動というわけではありません。軽い負荷でも、結構キツい筋トレです。
2) Watanabeら, Clinical Physiology and Functional Imaging (2014)


※PDF版はこちら

スロートレーニングについては以下でもご紹介しています。

健康づくりウォッチ「スロートレーニングのススメ
健康づくりウォッチ「スロートレーニング:下肢や体幹の筋トレ

著者
渡邊裕也 Watanabe Yuya
公益財団法人 明治安田厚生事業団
体力医学研究所 研究員

専門分野 トレーニング科学、応用健康科学
主な研究テーマ 低負荷レジスタンストレーニング、筋発揮張力維持スロー法、サルコペニア、フレイル、筋輝度


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