公益財団法人 明治安田厚生事業団

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研究の紹介

中学時代から運動・スポーツ活動を継続している高校生は自己効力感が高い

概要


本研究では、男子高校生における継続的な運動・スポーツ活動とストレッサーへの積極的な対処行動と関係する特性的自己効力感の関連性を検討しました。その結果、中学時代からスポーツ組織への所属を継続している生徒と同様に、組織に所属せずに自主的に運動・スポーツを継続している生徒も自己効力感が高いことが明らかになりました。本結果より、高校生において、運動部などのスポーツ組織に所属しなくても自主的に運動・スポーツ活動を継続することで自己効力感の発達につながる可能性が示唆されました。

背景


中学生や高校生などの青年期においては、受験や学業、人間関係等に関する多様なストレッサーにさらされるため、ストレッサーに対する適切な認知的評価や対処行動をとるための個人的要因の基盤を築くことが重要です。そのような個人的要因として、「特性的自己効力感」(以下、自己効力感と略す)があります。自己効力感は望ましい結果を生み出すために必要な行動をとれるか否かの効力予期を指し、自己効力感が高い者は積極的な対処行動をとることでストレス反応を低減させることが知られています。これまで、運動・スポーツ活動を行っている者は自己効力感が高いことが報告されていましたが、青年期における習慣的な運動・スポーツ活動の中断や自主的な継続に着目した検討は見当たりませんでした。そこで本研究では、男子高校生を対象に中学時代および現在の運動・スポーツ活動と自己効力感の関連性を検討しました。

対象と方法


本研究では某私立男子高校に通う1、2年生の全生徒を対象に、保健体育の授業中に、自記式質問紙調査票を用いて調査を実施しました。本研究で用いた主な項目は以下の2つです。

① 自己効力感:特性的自己効力感尺度※1という23項目の質問で評価
② スポーツ活動状況:中学時代のスポーツ組織※2への所属状況および高校生時点の運動・スポーツ実践状況をもとに以下の図1の6群に分類しました。

※1 特性的自己効力感尺度:「自分が立てた計画はうまくできる自信がある」「しなければならないことがあっても、なかなかとりかからない」「はじめはうまくいかない仕事でも、できるまでやり続ける」などの質問について、自分がどの程度当てはまるかを選ぶもの

※2 スポーツ組織:学校の運動部および地域のスポーツクラブ


図1 対象者の群分け


結果


分析の結果、所属経験無し群と比べて、中学時代からスポーツクラブへの所属を継続していた継続所属群、スポーツ組織に所属していないが自主的に運動・スポーツ活動を継続していた自主継続群は自己効力感が高いことが分かりました。また、高校生時点で所属を中断した中断群に比べて、継続所属群、自主継続群は自己効力感が高いことも示されました(図2)。

図2 6群間の特性的自己効力感の比較


まとめ


本結果より、青年期におけるスポーツ組織への所属は自己効力感を高める可能性があること、高校生活においてスポーツ組織への所属が難しい場合は、自主的な運動・スポーツ活動の継続が有効であることが示唆されました。スポーツ組織に所属することのみならず、自主的に行う運動・スポーツ活動によっても自己効力感が高く保たれる可能性が見出されたことは、さまざまな理由でスポーツ組織への所属が難しい生徒や、青年期の健康増進に向けた施策を考える学校や行政にとって有益な知見と考えられます。

題名:男子高校生における継続的な運動・スポーツ活動と特性的自己効力感の関連性:スポーツクラブへの所属に着目して
掲載誌:発育発達研究. 2018; 78: 35-42.
著者:神藤隆志, 鈴川一宏, 甲斐裕子, 北濃成樹, 小山内弘和, 越智英輔, 永松俊哉.
DOI番号:https://doi.org/10.5332/hatsuhatsu.2018.78_35


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