公益財団法人 明治安田厚生事業団

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研究の紹介

中学生、高校生のスポーツ活動は自己効力感を高めるか?

概要

ストレスを緩和し、物事にうまく対処していく力のひとつに「自己効力感」(自分はできると感じる力(註1))があります。本研究では、男子中高生を対象に、スポーツ活動への参加が自己効力感を高めるか検討しました。その結果、スポーツ活動を行っている生徒の方が自己効力感が高く、また、活動中の他者からのサポートは自己効力感を高める可能性が示唆されました。


(註1)自己効力感
自己効力感とは、ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまくできるかという予期であり、特定の場面における「課題特異的な自己効力感」と日常生活の様々な場面における予期である「一般性あるいは特性的自己効力感」という二つの基準があります。本研究では、青年期から成人期にかけた長期的かつ全般的な困難な状況への対処という観点から、「特性的自己効力感」に着目した検討を行いました。

図1 スポーツクラブ所属群と非所属群の自己効力感の比較

背景

心の健康を維持するためには、社会的要因の改善だけでなく、個々人がストレスを緩和し物事にうまく対処していくことが必要です。ストレスへうまく対処していく力のひとつである「自己効力感」を高めるためには、成功体験を積み重ねることが重要であると考えられています(Shererら 1982)。スポーツ活動は、コーチや仲間との関わり合いや競技力向上のための取り組みなどの中で、成功や失敗体験が絶えず繰り返されるため自己効力感を高める可能性がありますが、その関係は十分に明らかになっていません。

そこで本研究では、青年期の男子中高生において、スポーツ活動を行っている生徒は、行っていない生徒と比べて、自己効力感が高いか検証するとともに、自己効力感を高めるスポーツ活動の特徴を検討しました。

内容・成果

対象

某私立男子中学校・男子高校に通う1,2年生の全生徒

調査方法

当該学校長の許可を得て保健体育の授業中に、自己式質問紙調査票を用いて調査を実施しました。本研究で用いた主な項目は以下の2つです。

①自己効力感:
 特性的自己効力感尺度(註2)という23項目の質問で評価
②スポーツ活動状況:
 運動部活動あるいは地域のスポーツクラブへの所属有無をもとに下記の2群に分類しました。
 1.スポーツクラブ所属群(中学生143名、高校生519名)
 2.スポーツクラブ非所属群(中学生43名、高校生650名)

結果

中学生、高校生ともに、スポーツクラブに所属している生徒は、所属していない生徒に比べて自己効力感が高いことがわかりました(図1)。さらに、自己効力感と関連するスポーツ活動の特徴を検討したところ、スポーツ活動中のソーシャルサポート(註3)が多いほど、自己効力感が高いことが示されました(表1)。
これらの結果より、青年期の自己効力感を高める方法の1つとしてスポーツ活動を推奨できるとともに、指導者やメンバー同士の理解や激励、尊重などを促す取り組みが重要であるといえます。

                  表1 自己効力感と関連するスポーツ活動の特徴
(註2)特性的自己効力感尺度
「自分が立てた計画はうまくできる自信がある」「しなければならないことがあっても、なかなかとりかからない」「はじめはうまくいかない仕事でも、できるまでやり続ける」などの質問について、自分がどの程度当てはまるかを選ぶものです。

(註3)ソーシャルサポート
コーチや仲間から理解・激励してもらっているか、適切な評価を受けているか、必要な助けを得られているかなど

今後の予定

本研究は一時点における関連性を調べているため、「スポーツ活動を行うと自己効力感が高まるのか、それとも自己効力感がもともと高いためにスポーツ活動を行っているのか」という点については明らかにできていません。

今後は、スポーツ経験年数や複数時点の調査によって、スポーツ活動と自己効力感の因果関係を検討する予定です。また、今回はスポーツクラブに所属するか否かという分け方で検討を行いましたが、次回は、スポーツクラブに所属しない場合も、自主的に運動やスポーツを実践することで自己効力感が高まるかという点を明らかにしていきたいと考えています。

掲載雑誌
神藤隆志, 鈴川一宏, 甲斐裕子, 北濃成樹, 松原功, 植木貴頼, 小山内弘和, 越智英輔, 青山健太, 永松俊哉. 青年期男子における特性的自己効力感と関連するスポーツ活動の特徴.
体力研究 115: 8-14, 2017

研究メンバー
日本体育大学 鈴川一宏
明治安田厚生事業団 体力医学研究所 永松俊哉、甲斐裕子、北濃成樹 ほか

著者
明治安田厚生事業団 体力医学研究所 神藤隆志
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