公益財団法人 明治安田厚生事業団

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研究所レポート

第73回日本体力医学会大会で発表

日本体力医学会は、体力科学に関する研究者や医療従事者、指導者が年に1回集まる日本で最大級の学会です。当研究所は招待講演3件、口頭発表3件で研究成果を発表しました。


甲斐主任研究員の発表の様子

学会情報


学会名
第73回日本体力医学会大会

日程
2018年9月7日から10日

開催地
福井県

招待講演


甲斐裕子

シンポジウム「職域におけるヘルスプロモーション~健康経営に対する体力科学の役割とは~」
身体活動とメンタルヘルス


近年、企業において労働者の健康管理を経営的な視点から捉え、戦略的に実践する「健康経営」が広がってきています。そこで、本シンポジウムは、職域での身体活動・運動を促進するために必要な理論やエビデンスを整理し、健康経営に対する体力科学の役割を明らかにすることを目的に企画されました。
私は、「身体活動とメンタルヘルス」について担当しました。メンタルヘルスの保持増進は健康経営において大きな課題です。身体活動が運動やメンタルヘルスに及ぼす効果について、当研究所の研究成果を交えて解説しました。また、企業で身体活動や運動に取り組む事例を紹介するとともに、今後の課題についてまとめました。

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録証標です。



須藤みず紀

シンポジウム「脳を守る至適運動・環境条件の探索」
骨格筋は「脳を守る」ための鍵となれるか?


本シンポジウムでは、「脳を守る」という観点から、維持・向上させるために必要な運動や環境条件を複数の研究成果より検討する目的で行われました。シンポジウム内では、骨格筋の“動き”が、認知機能や情動(メンタルヘルス)に対してどのような効果をもたらすのかについて報告しました。
継続的な運動が脳の健康に効果的であることは知られていますが、そのメカニズムについては明確になっておりません。我々は、これまでヒトや動物を対象に運動を促すような環境条件における認知機能や情動の変化を研究してきました。これらの研究成果より、脳を守るための運動環境の条件をまとめて発表しました。今後は、「脳を守る」のための鍵となりうる骨格筋の動きとそのメカニズムについて研究を進めていきたいと考えています。
須藤副主任研究員の発表の様子


兵頭和樹

シンポジウム「脳の健康づくりと運動―運動の効果発現メカニズムを考える―」
高齢者における運動とワーキングメモリの関係:fNIRS脳機能イメージング研究


超高齢社会、ストレス社会の我が国において、認知機能・メンタルヘルスの保持増進は重要な課題です。この課題に対して、運動が有効であることがわかってきていますが、その効果発現のメカニズムに関しては未だ不明な点が多くあります。本シンポジウムは、運動が脳機能に与える効果のメカニズムについて動物・ヒト双方の研究から議論することを目的に企画されました。
私は、運動が高齢者の認知機能、特に前頭前野が担う抑制機能 (習慣等によって誘発される無意識下の行動を抑制する機能) やワーキングメモリ (情報を一時的に保持し、操作する機能) を高める脳内メカニズムに関して、光脳機能イメージング装置(fNIRS)を用いた研究成果を報告しました。

口頭発表

甲斐裕子、北濃成樹、神藤隆志、角田憲治、塙智史、内田賢、荒尾孝、永松俊哉

客観的に測定された座位行動と糖尿病の関係:MYLSスタディ


現代人は1日の約60%を座って過ごしているともいわれています。諸外国での研究では、この座位行動が糖尿病のリスクになると報告されています。しかし、糖代謝特性が欧米人と異なる日本人については十分には検証されていません。そこで、MYLSスタディの対象者のうち、活動量計で座位行動を測定しているMYライフ・ドックを受診した1,211名のデータを分析しました。その結果、1日の座位時間が9時間以上のグループは、7時間未満のグループと比較して、糖尿病が約2.5倍多いことがわかりました。本研究では、客観的に測定された座位行動と糖尿病の関係を日本人で初めて明らかにすることができました。

※本研究の成果は、MYライフ・ドック通信 第1号でも紹介しています。



須藤みず紀、安藤創一

ラットにおける豊かな環境飼育は自発的な身体活動量と空間学習記憶能力を増加させる


動物モデルを対象に、遊具などを設置した豊かな環境飼育における“身体活動量”と“空間学習記憶力”について検証した結果、豊かな環境飼育条件では、通常の飼育条件と比較して身体活動量が増加することが明らかとなりました。さらに、空間学習記憶能力の向上が示唆されました。遊具などの設置は、自発的な身体活動量を向上させる可能性があります。今後、これらのメカニズムを解明し、日常生活における環境改善に繫がるよう研究を進めていこうと考えています。


神藤隆志、甲斐裕子、北濃成樹、角田憲治、塙智史、内田賢、荒尾孝、永松俊哉

勤労者における職場運動の実践とワークエンゲージメント、心理的ストレスの関連:MYLSスタディ


我が国では、職場で健康増進のための運動(職場運動;例えば職員全員でラジオ体操など)を行う企業が多くあります。しかし、これまで職場運動に取り組むことが、仕事への前向きな姿勢や心理的ストレスとどのように関係するかは十分に検討されていませんでした。そこで本研究では、職場運動の実践が仕事に対するポジティブな心理状態を表すワークエンゲージメントや心理的ストレスとどのように関連するかを検討しました。
本研究では、明治安田健康開発財団新宿健診センターで実施されている「明治安田ライフスタイル研究」のデータを用いました。分析の結果、職場運動の実践頻度が高いほど、ワークエンゲージメントが高いという関連性が見出されました。この関連性は身体活動量や座位時間などの影響を考慮した上でも認められたことから、単に活発な生活を送るだけでなく、職場で同僚や上司とともに運動を行うことが好影響をもたらす可能性があります。一方、心理的ストレスに対しては、職場運動との関連性は認められませんでした。本結果を踏まえ、勤労者の心身の健康保持に有効な職場での運動・身体活動の促進方法について検討していきます。

※ワークエンゲージメントとは、仕事への活力や熱意、没頭などの前向きな心理状態のことを指し、ワークエンゲージメントが高い場合は「いきいき働いている」状態といえます。


兵頭研究員、神藤研究員の発表の様子


研究者の紹介はこちら
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