公益財団法人 明治安田厚生事業団

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健康づくりウォッチ

知的な活動と運動で認知症予防

読書など知的な活動時間が長いと、認知症発症リスクが低くなり、
さらに身体をよく動かせば、その効果が高まることが示されました。

座りすぎは認知症発症リスクを高める


「座りすぎ」は糖尿病など生活習慣病のリスクを高めるとされていますが、認知機能に対する影響は不明でした。私たちのこれまでの研究から、座っている時間でも、座りながらテレビを視聴するといった「受動的座位行動」は、認知症発症のリスクを高めるのに対し、読書、パソコン利用などの「知的活動的座位行動」は、リスクを低減させる可能性が考えられました。

そこで私たちは5年にわたり高齢者を対象に研究を行い、受動的座位行動、知的活動的座位行動が認知症発症リスクに及ぼす影響を検討しました。知的活動的座位時間として本や新聞を読む時間を、受動的座位時間としてテレビ視聴時間を調査しました。あわせて、認知症予防効果があるとされる身体活動量についても調査しました。

解析の結果、読書時間が長い人ほど認知症発症リスクが低いことがわかりました。これに対し、テレビ視聴時間と認知症発症リスクに関連性はありませんでした。また、身体活動量が多い人では、読書などによる認知症リスク低減の程度がより大きいことが明らかになりました。 

さらに、身体活動・座位行動の組み合わせと、認知症発症との関連を調べた結果、身体活動を16メッツ・時/週以上(※)かつ読書を10分/日以上実施する人では、両方とも実施しない人よりも認知症発症リスクが約60%低いことが示されました(図)。

※ウォーキングを1日1時間、週4日以上



認知症予防には身体活動と知的活動の組み合わせが効果的


身体活動と知的活動的座位行動はそれぞれ認知症予防に有効であると考えられますが、どちらかの実施量が少ないと、効果は少なくなるようです。認知症予防のためには、「運動だけ」「趣味だけ」といった単一の活動を行うのではなく、多様な活動を組み合わせることが認知症発症リスクの低減につながります。私たちの研究では、受動的座位行動は認知症発症に直接影響しないことが明らかになりましたが、受動的座位行動は抑うつや生活習慣病といった、認知症の原因となる疾患の発症リスクを高めます。受動的座位行動の時間を減らし、運動や読書など、多彩な活動をするよう心がけましょう。

【出典】根本ら, Journal of Epidemiology(2022)


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著者
根本 裕太
東京医科大学 公衆衛生学分野 客員研究員

専門分野 公衆衛生学、健康教育、運動疫学
主な研究テーマ ライフコースにおける身体活動と健康との関連、地域における高齢者のフレイル予防・介護予防
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