公益財団法人 明治安田厚生事業団

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健康づくりウォッチ

軽い身体活動で高齢期の認知機能を維持しよう

高齢期に自立した生活を営むには、健常な認知機能を維持することが重要です。認知機能を良好に保つためにはどんな生活を送ったらよいのでしょうか?

どのような身体活動が認知機能の維持と関連する?


認知機能はものごとを正しく理解・判断して適切に実行するための脳の機能ですが、加齢に伴い少しずつ衰えていきます。認知機能にはいくつか分類がありますが、目的に向かって自分の行動や思考を制御する能力が「実行機能」とされています。実行機能は料理をつくる時などに必要な能力で、献立を決め、必要な食材を買い、効率的な手順で同時並行的に調理する、という一連の行動を取るために機能します。実行機能が著しく低下すると2つ以上の作業を並行して行うことが難しくなるなど、日常生活に支障が出てしまいます。

これまでの研究から、身体活動により実行機能を維持・改善できることが分かっていますが、スポーツなどの激しい運動と、歩行のような軽い身体活動のどちらが効果的なのか、といった点についてはさらなる検討が必要です。また1日は24時間と有限であり、身体を動かす時間を増やすには、別の行動をしている時間を減らす必要があります。そこで私たちは、高齢者の身体活動と実行機能の関係を調査し、どの行動を減らしてどんな身体活動を増やすのがよいかを検討しました。

低強度の身体活動が多い高齢者ほど認知機能が良好


健常高齢者76名を対象に、活動量計と調査票で24時間の行動(身体活動・座位・睡眠時間)を調査しました。さらに実行機能を評価するため、パソコンでいくつかの課題に取り組んでもらいました。

すると息のあがる運動のような中高強度の身体活動ではなく、ゆっくりした歩行や家事など低強度の身体活動の時間が多い高齢者ほど、実行機能のなかでも「抑制機能」を評価する課題の成績が高いことが分かりました(図)。抑制機能とは不適切な行動を抑え、適切な行動を選択する能力のことで、例えば横断歩道を渡るときに赤信号に気付き、瞬時に止まる場合などに必要です。



さらに解析の結果、座位行動や睡眠時間を減らし、低強度の身体活動に充てることで実行機能が向上する可能性が示されました。テレビを見ている時間や横になっている時間を減らし、日常生活の中でちょっとした活動を増やすことが認知機能の維持に効果的かもしれません。

【出典】Hyodoら,Frontiers in Human Neuroscience(2023)




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著者
兵頭 和樹 Hyodo Kazuki
公益財団法人 明治安田厚生事業団
体力医学研究所 研究員

専門分野 運動生理学、スポーツ神経科学
主な研究テーマ 運動が高齢者の認知機能に与える効果
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