公益財団法人 明治安田厚生事業団

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インタビュー

この人が語る健康

「この人が語る健康」は健康づくりに携わる方に、
取り組みを始めた経緯や、そこに込める思い、
関わり方、これからのことなどについて伺い、
「健康とは何か、そのために何ができるか」を
探ります。

vol.06
2022年10月24日
公益社団法人日本エアロビック連盟
理事長知念 かおる
活動内容
  • スポーツとしてのエアロビクスの普及振興
  • スローエアロビックの普及、指導者養成
  • エアロビックの学校体育への導入
健康のためにしていること
  • 毎日10分のノルディックウォーキング
  • 時には温泉やスーパー銭湯などの広いお風呂でリフレッシュ!

第6回目は公益社団法人日本エアロビック連盟の知念理事長にお話を伺います。エアロビックの普及に取り組まれるようになったきっかけや今後の目標などについてお話いただきました。

知念理事長がエアロビックに携わるようになったきっかけなどお伺いできますか。
知念

1980年代前半にアメリカから日本へ、スタジオで行う有酸素運動としてのエアロビクスが入ってきました。

フィットネスをテーマにした映画が制作されるなど非常に華やかな雰囲気があって、若い女性を中心に人気が出ました。

同時にエアロビクスをスポーツ競技にしようということでルールの整備が始まり、競技会が開催されました。当時、私はインストラクターとして活動しており、競技者として出場する立場でした。三回目の全日本選手権では、チャンピオンになりました。

チャンピオンに輝いた全日本選手権
チャンピオンとは、すごいですね。出場する側から、どのような経緯でエアロビック連盟に参画されたのでしょうか。
知念

当時はエアロビック連盟の事務所の近くに住んでいたので、そこに目をつけられたのか(笑)、前会長から「チャンピオンにもなったことだし、いろいろ手伝ってほしい」とお声がけいただいたのがきっかけです。

本業のインストラクターを続けながらエアロビック連盟の理事として活動を始めました。初期は組織の管理というより、競技会のルールづくり、指導者育成カリキュラムの作成、検定制度の整備など、いわゆる「ソフト」をつくるのが私の仕事でした。

競技会で審判を務める知念理事長
  

30年以上に渡っていろいろな仕事をしましたが、印象深いのはテレビ番組への出演です。全国のさまざまな都市へ出向いていき、地域の方と一緒にエアロビックをやるという番組でした。多いときは1年で30か所くらい回りました。NHKさんの衛星放送で10年ほど放送され、長寿番組となりました。

収録に参加してくださるのはみなさん運動初心者の方でしたので、そういった方々への声がけの方法とか、番組のプロデューサーさんからたくさん学びました。指導方法についてもご指摘をいただくことで、考え方が深まりました。運動に乗り気でないような参加者さんが、一緒に運動を楽しんで、最後には笑顔で帰っていく姿を見ることができると、とても喜ばしく、やりがいを感じる貴重な機会でした。

番組収録の様子
海外(サイパン)で収録したこともありました
  

本業のインストラクター業務に加えて、連盟の運営やテレビ番組にも関わり、他業種の方とのお付き合いが増えたことも、さまざまな社会経験を積むチャンスとなりました。自分では「他流試合が多かった」と思っていますが、そのあたりを評価していただき、前理事長より指名されて第2代理事長に就任しました。組織の管理や取りまとめは一番苦手な部分だったのですが(笑)。目の前の課題をやっつけることに専念し、夢中で仕事をしていたら、いつのまにか現在に至ったというのが実感です。

エアロビックの黎明期から組織を立ち上げ軌道に乗せるまで、さまざまなご苦労があったと思います。現在はエアロビックを「生涯スポーツ」と銘打っていらっしゃるとのことですが、この考え方は今の世の中に即しています。スローエアロビックは筑波大学の征矢先生とともに開発されたと伺っていますが、この出会いは大きかったのでしょうか。
知念

いろんな方に運動していただくためには、「この運動は心地よいですよ」といった主観的な感想だけで勧めるのではなく、誰でも説得できるエビデンスが必要である、とご指摘いただきました。

エアロビックといえば腕を大きく伸ばす、音楽に合わせて飛び跳ねるといった非常に人工的な動きを中心として、いわゆる「運動量」が勝負でした。ややきついと感じる中強度の有酸素運動をしてカロリーを消費しようというような。

スローエアロビックでは日常に溶け込むような自然な動きをプログラムに組み込みましたが、それには、エアロビクスが重視していた「量」から「質」に転換させていく必要がありました。自分で納得して「心地よい動き」という現在のコンセプトを生み出すまで、3年くらいかかりました。

スローエアロビック指導者講習会
受講生の皆さんとノビユラ
成人や高齢者だけでなく、子供たちの学校教育にエアロビックを取り入れる活動や、障がいのある方にもエアロビックを普及しようという活動もされていますね。
知念

2017年に初めて、文部科学省の学習指導要領にエアロビクスが例示されました。

学校で指導にあたる先生方にエアロビクスの良さを伝えるとともに、先生と子供たちが一緒に楽しめるように動画を制作して、ホームページで数多く公開しています。エアロビクスと聞くと「大変そう」と敬遠されることが多いですが、そのハードルが低くなるように、エアロビクスの良さを伝えて、多くの学校で取り組んでいただくために、模索しながら奮闘しています。

インタビューに応じる知念理事長
  

世代の区別なく、また体が不自由であっても、音楽に乗って体を動かすことは、多くの人にとって心地よいものです。インストラクターはプログラムに凝りがちですが、プログラムはあくまで「運動する人にどう楽しんでいただけるか」という手段のひとつに過ぎないと感じています。有識者の方をお招きして普及委員会を立ち上げるなど、より多くの方に楽しんでいただくために試行錯誤しています。

研究所と共同で研究を進めている「八王子プロジェクト」ではどのような手ごたえを感じていらっしゃいますか。
知念

オンラインを活用しレッスンを行うことで、インストラクターも、指導の幅が広がっていると感じます。

画面は二次元ですから、より正確に動きを伝えるためには指導者自身がどう動くべきか、参加者にどう伝えたら理解してもらえるか、正しい動き方を突き詰め、情報を伝える力が養われます。画面越しではありますが、レッスン参加者の皆さんが笑顔で運動する姿を見て、オンラインの大きな可能性を感じています。

またプログラムとしてのスローエアロビックが「カタチ」になってきたことを実感しています。開発当初から時間を経て変化し続けたことで、良い形に整ってきたと感じています。レッスン参加者から「楽しい」という感想をいただくと、私たちのやってきたことは間違っていなかったのだと確信できます。今後は筋力トレーニングやストレッチなどと組み合わせて、より楽しんでもらえるプログラムづくりをめざしています。

今後の目標などお伺いできますか。
知念

スポーツ団体の活動というのは皆さんのご支援がなければ成り立ちません。

特にSUZUKIさんは30年以上に渡り、競技会への協賛から、学校教育へのエアロビクス導入、スローエアロビックの普及まで、多岐に渡る私たちの活動をさまざまな側面からサポートをいただいています。お世話になった皆さんにしっかりと形を作って恩返しをするのが、理事長としての使命だと思っています。

競技会の様子
世界の舞台で活躍する日本選手たち
  

またエアロビクスを国体の正式競技にしたいという目標もあります。クラシカルな競技エアロビクスから始まりましたが、外側からエアロビックを見てどう思うか、どう感じるか、いろんな声を取り入れて、より多くの方に楽しんでいただきながら、皆さんの健康づくりにも貢献できる「柔軟で多様なエアロビック」を育てていきたいと思っています。

そしてもうひとつ、いま自分がすべき重要な仕事は、次の世代に自分の経験を伝え後継を育てていくことだと思っています。自分と同じ苦労をしないように、失敗も含め経験を伝えていきたい。若く優秀な指導者を育成したいという思いです。

スローエアロビック指導者講習会
受講生1人ひとりにアドバイスする知念理事長
座右の銘などはおありですか。
知念

私の好きな言葉は「麗老」なのですが、文字通り麗しく年を重ねていきたいと思っています。

年を取ることが嫌にならない、自分なりのスタイルを持ちたい、若づくりをするのではなく、自然体で、快適に暮らしていくための努力はしたいというスタンスです。

コロナ禍で価値観が変わったことなどありますか。
知念

自宅でテレワークできるようになって、有効に使える時間が増えました。

テレワークの日は出勤するはずの時間に朝の散歩に出かけ、リフレッシュした気持ちで業務がはかどります。朝の時間が楽しみになりました。

全国に広がる組織を束ねるのが私の仕事ですから、以前は各地を回っていろいろな人と会っていました。今はオンラインを活用することで、場所を問わず時間を合わせやすくなったので、前よりもコミュニケーションを取りやすくなり、皆さんとの繋がりが強まった気がしています。インフラが変わると常識が変わることを実感しています。ただやはり、対面で話したいときには出かけていくようにしています。メリハリをつけて働けるようになったなと感じています。

インタビューを振り返って

日本エアロビック連盟の「顔」としてさまざまな方との出会いが多かったと語ってくださった知念理事長。業界の垣根を越えて多くの方の協力を得て、エアロビックを育てていこうという情熱を感じました。取材にお伺いしたスローエアロビック指導者講習会で、理事長でありながらも指導者として、受講生1人ひとりに丁寧な指導をされる姿が印象的でした。1つひとつの所作が美しく、「麗しさ」が内側からにじみ出る素敵なお人柄を感じる取材となりました。

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