公益財団法人 明治安田厚生事業団

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プレスリリース

あなたなら、引き受けますか?
―国内初!一軒一軒訪ねる活動量計調査でわかった、健康調査に参加する「きっかけ」―

ポイント


◎ 「日本人は実際にどれだけ身体を動かしているのか」。この問いに正確に答えられる、全国規模の実測データは、まだありません。実現には多くの方の調査協力が欠かせませんが、活動量計を用いた調査は1週間の装着をお願いする負担の大きさから、参加者が集まりにくいことが世界共通の課題です。
◎ 私たちは、調査員が一軒一軒ご自宅を訪ねて活動量計を手渡しし、ご協力いただいた方に謝礼(5,000円分)をお渡しする調査方式を、国内で初めて導入しました。参加率は31.5%にのぼり、これまで日本国内で一般的だった郵送調査の平均(13〜23%)を上回りました。
◎ 参加のきっかけは「健康への関心」「社会の役に立ちたい」「自分の活動量を知りたい」「謝礼」など、世代や性別によってさまざまでした。多様なきっかけに応える調査の工夫が、偏りのないデータへの鍵となります。

概要


「1週間、腰に活動量計をつけていただけませんか」とお願いされたら、あなたは引き受けるでしょうか。

公益財団法人 明治安田厚生事業団(本部:東京都新宿区、理事長:生井 俊夫)は、公益財団法人 笹川スポーツ財団との共同研究事業として、三大都市圏で実施した活動量計調査について「どんな方が、どのようなきっかけで参加してくださったのか」を詳しく分析しました。その結果、調査員がご自宅を訪ねて活動量計を手渡しする国内初の方式により、参加率は31.5%と、これまで行われた国内の郵送調査実績の平均を上回り、男女の偏りのないデータが得られました。参加のきっかけは世代や性別で大きく異なり、シニア世代では「健康への関心」、若い世代では「謝礼」、女性では「自分の活動量を知りたい」が参加を後押ししていました。

本研究の成果は、国際学術誌「PLOS One」に2026年6月1日付で掲載されました。

背景


スマートウォッチやヘルスケアアプリの普及で、「自分の歩数」を毎日確認できる時代になりました。ところが、日本全国を対象に、強度別の活動や座位時間を計測できる機器を用いて正確に捉えたデータは不足しています。国の健康づくり施策(健康日本21、健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023など)をより良いものにしていくには、土台となる正確な実態把握が欠かせません。

しかし、活動量計を用いた調査は「数日間つけ続ける」という負担をお願いする必要があるため、世界的に参加者が集まりにくいことがわかっています。さらに、参加してくださるのは高齢の方や健康への関心が高い方に偏りがちで、そのままでは実際よりも「元気な国民像」が描かれてしまう恐れがあります。海外の研究では、調査員による対面での機器配布と謝礼が参加の後押しになると報告されていますが、日本国内の住民を対象に実施された活動量計調査はすべて郵送方式で、対面方式の効果は確かめられていませんでした。

そこで私たちは、2023年に実施したトライアル調査で、調査員がご自宅を訪ねて活動量計を手渡しし、研究協力後に謝礼をお渡しする方式を国内で初めて導入し、参加率や参加者層の偏りなどを分析しました。

対象と方法


首都圏・中京圏・阪神圏の13都府県・50地点で、住民基本台帳から無作為に選ばれた2、20〜79歳の男女650人を対象としました(2023年10〜11月実施)。事前にはがきでお知らせした上で、調査員がご自宅を訪ねて活動量計と調査票を手渡しし、後日再び訪問して回収しました。お会いできるまで繰り返し足を運び(1人あたり平均3.2回)、多いお宅では10回以上訪問しました。

参加者には、休日を含む連続7日以上、起きている時間に腰に活動量計を装着していただきました。1週間のご協力に対し、5,000円分の謝礼と、ご希望の方にはご自身の測定結果のフィードバックをお渡ししました。参加者層の偏りについては、国勢調査(2020年)と比較して確かめました3

結果


650人のうち205人が調査に参加し、参加率は31.5%にのぼりました。これは、これまでに国内で行われた郵送方式の調査(13〜23%)を上回る結果です(下図1)。参加者に占める女性の割合は国勢調査と同水準で、活動量計調査で世界的な課題とされてきた性別の偏りは見られませんでした。一方で、年齢はやや高め(平均53.0歳 vs 49.5歳)で、働いている方やご家族と同居している方が多い傾向が見られました。参加のきっかけ(複数回答可)は、「謝礼」(50.8%)、「社会の役に立ちたい」(34.9%)、「自分の活動量を知りたい」「健康への関心」(各27.5%)の順で、3人に1人が「社会の役に立ちたい」を挙げていました。きっかけは世代で大きく異なり、60〜79歳では「健康への関心」(47.5%)が、20〜39歳では「謝礼」(73.3%)が参加を後押ししていました。また女性は男性より「自分の活動量を知りたい」を挙げる方が多く(34.4% vs 20.8%)、測定結果のフィードバックが動機になっていました(下図2)。健康への関心に応える仕組みと、時間への対価としての謝礼といった複数の入口を用意したことが、男女の偏りの少なさにつながった可能性があります。

一方で、全体の19.8%の方にはお会いできず、その割合は20〜39歳で32.1%、60〜79歳で10.7%でした。平日日中の訪問が働く世代・若い世代の生活リズムと合わなかったためと考えられ、訪問時間の柔軟化や装着負担の少ない機器の利用など、調査する側の工夫が今後の課題といえます。

著者のコメント


健康調査は、貴重な時間を割いてご協力くださる方々の善意と関心に支えられています。今回の調査で改めて実感したのは、参加のきっかけは人によってさまざまで、そのどれもが納得の理由だということです。健康への関心、社会への貢献、自分の身体への好奇心、そして忙しい毎日の中で時間を割くことへの対価。私たちの仕事は、その一つひとつに丁寧に応える調査を計画・実施することだと考えています。現在は、本調査を足がかりに調査エリアを拡大し、日本人の活動量の実態をまとめた論文を執筆しています。続報にご期待ください。

一人ひとりのきっかけに少しでも多く応えられるよう、これからも調査のあり方を工夫していきます。いつかあなたにお声がけする日が来たら、ご協力どうぞよろしくお願いいたします。

発表論文


掲載誌:PLOS One
論文タイトル:Physical activity and sedentary behavior surveillance using accelerometers in Japanese urban adults: A descriptive study of participation and adherence
著者: Naruki Kitano*, Ryoko Kawakami*, Yuya Fujii, Daisuke Yamaguchi, Yuko Muramatsu, Yuki Matsushita, Yosuke Mizuno, Sachiko Miyamoto, Tomohiko Yoshida, Yuko Kai, Takashi Arao(*共同筆頭著者)
DOI番号:10.1371/journal.pone.0350144

用語解説


1. 活動量計:三軸加速度センサーを搭載し、身体活動や座位行動を客観的に評価できる機器。腰に着けるだけで、どのくらい動き・座っているかを測定できる。
2. 無作為抽出:今回の調査では、住民基本台帳(各市区町村の住民記録)から、くじ引きのように偏りなく対象者を選んだ。「日本の縮図」に近いデータを得る基本となる。
3. 国勢調査との比較:参加者の顔ぶれ(年齢・性別・就業状況など)が日本全体とどれだけ似ているかを、国勢調査と比べて確かめた。国勢調査は、日本に住むすべての人と世帯を対象に5年ごとに行われる国の全数調査で、日本全体の人口構成を最もよく表す。

利益相反


著者には開示すべき利益相反はありません。

財源情報


本研究は、明治安田厚生事業団と笹川スポーツ財団の共同研究事業として実施されました。

※PDF版プレスリリースはこちら

【問い合わせ先】
公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所 広報 西田
Tel: 042-691-1163
E-mail: pr@my-zaidan.or.jp
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