公益財団法人 明治安田厚生事業団

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健康づくりウォッチ

運動に無関心な高齢者を動かすヒント

高齢者の健康づくりに運動は有益ですが、運動に関心がない人もいます。
高齢者18,000人のデータ分析から「運動無関心層」対策のヒントを探りました。

高齢者の運動無関心層は約30%


運動は、高齢者の健康づくりや介護・認知症予防にとても有益です。しかし、「運動にはそもそも関心がない」高齢者も多く、対応に頭を悩ませている自治体や専門職の方も多いのではないでしょうか。

運動無関心層の高齢者へのアプローチのヒントを得るために、日本老年学的評価研究(JAGES)が実施する郵送調査のデータを分析しました。調査は2019年に実施され、分析対象者は全国24都道府県在住で無作為抽出された65歳以上の男女18,464人でした(前期高齢者57%、男性50%)。分析対象者を「運動行動の変容ステージ」で分類すると、前熟考期(≒無関心層)は約30%と決して少なくないことが確認されました(図1)。

※行動変容ステージモデルにもとづくと「前熟考期」が正確な表記ですが、わかりやすさの観点から「無関心層」と一部記載しています。

運動無関心層には「社会参加」と「人とのつながり」の促進を


運動でなくても、日常生活で歩くことは健康づくりに有益です。そこで、前熟考期(≒無関心層)のうち、「運動以外で1日30分以上歩いている」人の特徴を明らかにしました。すると、「外出頻度」「仕事」「ソーシャルサポート」「近所づきあい」「公共交通の利用」等が関連しており、社会的に活発であることや人とのつながりが多い人ほど、歩いていることがわかりました(図2)。

運動に関心がない高齢者にも、「健康のために運動しましょう!」と啓発したくなります。しかし、「運動」を前面に出さなくても、社会参加を促し、人とのつながりづくりを進めることで、結果として体を動かす高齢者を増やせるかもしれません。

本研究は、厚生労働科学研究費「健康への関心度による集団のグルーピングと特性把握ならびに健康無関心層への効果的な介入手法の確立(代表:福田吉治)」の分担研究(分担研究者:甲斐裕子、金森悟)として実施しました。


【出典】金森, 甲斐ら, 日本公衆衛生雑誌 (2022)


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著者
甲斐 裕子 Kai Yuko
公益財団法人 明治安田厚生事業団
体力医学研究所 上席研究員

専門分野 運動疫学、健康教育学、公衆衛生学
主な研究テーマ 運動とメンタルヘルス、座りすぎの健康影響

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