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健康づくりウォッチ

姿勢を“直す”と腰痛予防になる?

姿勢と腰痛の関係を見直す

猫背よりも、直立姿勢が良いのか


「腰痛の原因は姿勢にある」といった考え方は、広く浸透しています。「猫背は腰痛になりやすい」「背筋を伸ばした姿勢は腰痛になりにくい」といった話を聞いたことがありませんか?

けれども、これらの“説”はどのくらい正しいのでしょうか。医療や医学の世界では、質の良い研究結果に基づいて介入方法を選択するので、研究が進むと標準的な介入方法が変わる場合があります。じつは現在、猫背のような“悪い”姿勢が腰痛と関連しているという明確な証拠はないとされています*1-2。むしろ、“姿勢の良し悪し”と腰痛には関係がみられないという見方が海外を中心に広まっています*3-4

背筋が伸びた“良い”姿勢や左右対称の“綺麗な”姿勢を求めすぎると、苦労の割には報われないかもしれません。

※スポーツや重労働時などの姿勢には当てはまらない場合があります。




【参考文献】
*1 Roffeyら,Spine Journal(2009)
*2 Kwonら,Occupational Medicine(2011)
*3 Slaterら,Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy(2019)
*4 Smytheら,Australian Journal of General Practice(2021)

同じ姿勢を取り続けないことが大切!


では、腰痛予防で普段からできることはあるのでしょうか。まず、同じ姿勢を取り続けないことが大切です。これは、座位、立位のどちらにもいえることです。たとえば、ずっと座っている人は、しばらくしたら立って(できれば歩いて)姿勢を変えましょう(立ち仕事なら、この逆です)*5-8。仕事中ずっと立てない(座れない)場合でも、少し姿勢を変えると腰痛予防の効果を得られる可能性があります*9-10

たとえば、身体を伸ばしたり丸めたりを繰り返してみましょう(隣の人に気づかれない程度でもOK)。これだけでも骨盤や腰椎の動きが引き出され、姿勢を変えていることになります。



【参考文献】
*5 Bontrupら,Applied Ergonomics(2019)
*6 Hannaら,Frontiers in Public Health(2019)
*7 Coenenら,British Journal of Sports Medicine(2018)
*8 Thorpら,Occupational and Environmental Medicine(2014)
*9 Kettら,Frontiers in Sports and Active Living(2021)
*10 Fewsterら,Human Movement Science(2019)

姿勢よりも気をつけたいポイント


姿勢よりもっと気をつけていただきたいポイントがあります。

それは、“適度な運動”や“ストレス対策”、“適切な睡眠”、“禁煙”など、基本的な生活習慣を整えることです。「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、こういった健康的な生活習慣は腰痛予防として医学的に推奨されています*11。また、生活習慣を整えることは将来の死亡率に影響を与えるほど大きなインパクトをもっています*12。理想の姿勢を追い求めるよりも、まずは、足元の生活習慣から見直してみませんか?(私もやっています!)

【参考文献】
*11 日本整形外科学会・日本腰痛学会監修,腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版,南江堂(2019)
*12 Tamakoshiら,Preventive Medicine(2009)


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著者
西村 裕介 Nishimura Yusuke
一般財団法人 明治安田健康開発財団
健康増進支援センター
理学療法士・健康経営アドバイザー

専門分野 理学療法
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