公益財団法人 明治安田厚生事業団

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インタビュー

この人が語る健康

「この人が語る健康」は健康づくりに携わる方に、
取り組みを始めた経緯や、そこに込める思い、
関わり方、これからのことなどについて伺い、
「健康とは何か、そのために何ができるか」を
探ります。

vol.09
2025年12月18日
グレーシアパーク八王子みなみ野
管理組合法人
自治防災会会長石川 隆敏
活動内容と目標
  • マンション居住者と組織(管理組合)の防災力向上
  • マンションコミュニティの醸成
  • 健康寿命延伸に資するイベントの企画運営
健康のためにしていること
  • テニス(毎週1回のスクール参加、マンション仲間との週末テニス)
  • 気功太極拳(月1回のサークル主催と参加)
  • 1日5,000歩を目安にしたウォーキング(特に建物階段の上り下り)

大規模マンション「グレーシアパーク八王子みなみ野」では、体力医学研究所が開発したオンライン運動プログラム「スローオンラインフィットネス(Slow Online FiTness: SOFT)」を活用し、マンション居住者にとどまらず近隣住民の健康づくりに取り組んでいます。SOFTの運営を担っている自治防災会会長 石川隆敏さんに、「防災×健康」をキーワードとした活動や、地域の健康づくりに取り組み始めたきっかけについてお伺いしました。

石川さんは自治防災会の会長として「防災×健康」をキーワードにさまざまな取り組みをされています。「防災」と「健康」は互いにパッと結びつくものでもないように思いますが、どんなきっかけでこのキーワードを思いついたのでしょうか?
石川

2015年にマンション管理組合の理事長になったのですが、前年度の理事会から、「自主防災組織の設立」というミッションを引き継ぎました。いろいろと勉強する過程で、防災に最も求められているのは「自助」でも「公助」でもなく、地域住民同士が助けあう「共助」であるとわかりました。防災力の向上に取り組む過程で、巷では「防災×福祉」という言葉が使われていることも知りました。

私たちのマンションは2000年竣工で、いまは50代の世帯主がもっとも多いです。永住志向が強い方が多いのも特徴で、「防災×福祉」について考えたとき、私の頭のなかには、10~20年後のマンションで災害が起こった際に、「老人が老人の避難行動を助ける共助の姿」が浮かびました。その対策として、少数の若者と大勢の元気な老人が住むマンションになればよいのでは?と考えました。

防災の観点から、災害時の要配慮者を減らし、支援側になれる人を増やすために、20年後の健康を維持できる働きかけをしようと思ったのがきっかけです。

グレーシアパーク八王子みなみ野 外観
総戸数225戸の大規模マンション
みなみ野は東京都八王子市南部に位置する新興住宅街で、緑豊かな丘陵地帯にある
「災害に備える」という視点からの健康づくり、とても革新的な考え方だと思います。具体的にはどのような活動をされてきたのでしょうか?
石川

管理組合理事長になったあと、まずは「災害時に助け合えるコミュニティづくり」を目的に、マンションの管理規約を改定して「居住者間のコミュニティ形成」を管理組合の業務に新設しました。これと並行して自治防災会を設立し、会長を兼任することになりました。

当時は居住者同士の交流がほとんどなかったので、大小さまざまなイベントを企画して、小さなコミュニティづくりから試みました。男性はなかなか呼び込めないので、まずは互いに顔見知りではない女性たちをつなげる作戦で輪を広げていきました。現在は防災訓練以外にも住民同士が交流できるバーベキューや敷地内の落ち葉拾いを兼ねた焼き芋会、お子さん向けのプラレール運転会など、さまざまなイベントを企画しています。

イベントの様子
多種多様な企画で住民同士のつながりを紡ぐ
最近は地域のつながりが希薄化している傾向が強いですが、グレーシアパーク八王子みなみ野では近所づきあいが盛んな印象で、コミュニティ活動の賜物と感じました。実際に健康づくり活動を始めたのは、いつ頃だったのでしょうか?
石川

「防災×福祉」という言葉を知ったのが2022年ごろで、翌年3月に初めて健康づくりを主眼としたイベントを企画しました。理学療法士の講話を聴いたあとに運動する、というイベントだったのですが、事後アンケートで「もっと身体を動かしたかった」という感想がありました。それまでは定期的な運動を目的とした体操系の企画はなかったので、毎週実施できるコンテンツを探していたところ、体力医学研究所とSOFTの存在を知りました。まずはSOFTの体験会を開催した後、自治防災会主催の企画として、正式に導入を決めました。

SOFT導入の決め手は何だったでしょうか?
石川

動画配信を見ながら運動するので、必要な機材の準備とオンライン接続のオペレーション問題を解決できれば、私がいなくても開講できます。また毎週配信があるので、新しい人にも声掛けしやすいですね。録画を利用すれば、祝日とか、自分たちの好きなタイミングで開講できることもメリットです。

私たちの健康づくり活動のターゲットである50代以上の方はもちろん、何歳でも取り組める運動で、それぞれの必要に応じて運動強度を変えられる点も魅力ではないでしょうか。科学的に健康効果が確認されている運動プログラムが組み込まれている点も大きいですね。プロの講師による指導でクオリティも担保されていて、45分という時間も「長すぎず短すぎず」で、適度な時間設定だと思います。

毎週火曜日に開催されているSOFTの様子
参加者が増えたため、集会室のなかに2つスクリーンを用意している
私たちの想定する理想的な形でSOFTをご活用いただき、開発した側としても嬉しい限りです。現在、たくさんの会場からSOFTに参加していただいていますが、グレーシアパーク八王子みなみ野の大きな特徴として、男性参加者が多いことが挙げられます。SOFTのような「通いの場」参加者の大多数は女性で、男性は出てこない傾向が強いのですが、男性参加者を呼び込む秘訣があるのでしょうか?
石川

「何か役割を頼むこと」ですね。現在、参加している男性陣には、「一緒に体操しよう」ではなく、「ちょっと運営を手伝ってくれない?」と声をかけました。

私は現在も仕事をしている現役サラリーマンなので、どうしても仕事で抜けざるを得ない場合があります。もうひとり発起人がいるのですが、彼も仕事をしており、SOFT継続のためには、運営メンバーの増員が必要でした。

いまは発起人の私たちを含め7名体制で、機材のセッティングやオンライン接続は、ほぼスカウトした人たちにやってもらっています。集会室の機材構成は複雑なので、最初のうちは私がレクチャーしていましたが、いまでは男性メンバー同士で操作方法を教えあっています。もちろん、終了後の片づけも率先してやっていただき、私が不在でも、支障なく開講できる状態になっています。

会場設営と片付けの様子
男性メンバーは早めに集合し、手分けして素早く会場準備を完了
終了後は全員で片付けるので、あっという間に終わる
運営に携わる人が多くいることで特定の人に負担を強いる必要がなく、それも継続性の高さにつながっているのではないでしょうか。SOFT導入から2年が過ぎましたが、印象に残るエピソードなどがあれば教えてください。
石川

2025年5月に開催された対面イベント「SOFT集会」のときのことです。当会場からメンバーが連れ立って参加して、翌週の集会室には、皆さんがSOFTのTシャツを着てこられたのには驚きました。SOFT集会は、ちょうど私たちの開講日と重なっていたので、遠くへ出向くのが難しい方や男性メンバーは、集会室で録画を見ながら体操しました。気軽に録画が利用できることも、オンラインならではの利点かもしれませんね。

講師とはオンラインでつながりますが、体操前後の会場内では、参加者の皆さんが互いに声をかけ合って、お喋りが弾んでいますね。お伺いしたところ、マンション居住者だけでなく、近隣住民の参加も受け入れているとのことですが、外部からの参加も促進する意図は何でしょうか?
石川

SOFT以外の企画もそうですが、マンション外に住む子供や孫がおじいちゃん・おばあちゃんに誘われて私たちのイベントに参加するとか、地域で仲良くなったお友達と誘い合って来るとか、こういったパターンを受け入れることで、イベント参加に対する最初のハードルが下がります。また私たちの健康づくり活動を地域の方にも知ってもらい、マンション住民が何かのきっかけで地域の方とお知り合いになったとき、外部のイベントにマンション住民を誘ってくれる、という可能性に期待している部分もあります。

さらに、健康づくりの場を維持してほしいという、行政と住民の要望もありました。せっかく場所と時間を準備するのに、参加者が少ないともったいないですからね。いまは地域包括支援センターにもチラシを置いてもらって、外部の人の新規参加も随時受け付けています。

石川さんが参加者の受付をしているあいだ、来場した一人ひとりのお名前を呼んで、非常に仲むつまじい様子が見て取れました。SOFTの最中も参加者とアイコンタクトしたり、親密な関係性を築くのが得意のようにお見受けしました。
石川

いえ、自分は本来、人見知りな性格です。ただ自分でも思うのは、状況の変化とか人の動きには敏感な方かもしれません。たとえばマンション内のバーベキューで、少しポツンとしている人がいれば声をかけたり、「飲み物を探しているな」という人を見かけたらドリンクの場所を案内したりとか、ひとの様子を見て何を必要としているか、割と早く気がつく方かもしれません。人付き合いが得意そうな人には、次のバーベキューで受付係をやってくれない?と声をかけるとか、何かに秀でている人を見つけたらスカウトして、活動仲間を増やしています。

SOFTの会場でも心がけているのは、継続参加している人のなかから「コミュニケーション・ハブ」を見つけて、初参加の方にはまず、その人を通じて輪のなかに入ってもらいます。自分はホスト役として、新規参加の人に疎外感を感じさせないように、小さな工夫を凝らしています。それに自分のことを名前で呼ばれると、「私のこと覚えてくれてるんだ」って、なんだか嬉しいじゃないですか。それが通ってきてくれるきっかけになればと思って、心がけています。アイコンタクトも、会場内の皆さんの様子を気にしている気持ちの表れでしょうかね。

参加者と談笑する石川さん
「元気だった?」「久しぶりに来てくれてありがとう」といった声がけから話が弾む
「通いの場」の運営に役立つヒントを沢山いただいた気がします。他にもSOFT運営で意識していることがあれば、教えていただけますか。
石川

グレーシアパーク八王子みなみ野のSOFTが通いの場となるために、通うことが身体的な負担にならないことが重要だと思っています。歩いて10分くらいの場所がちょうどいいのではないでしょうか。

ベッタリした付き合い方ではなく、程よい距離感で、身近な場所でありながら、誰もが集える居場所になって、皆さんの健康づくりに貢献できていれば何よりです。皆さんに価値を感じてもらえれば、「いいマンションだ」と思ってもらえますしね。おかげさまで参加者がだいぶ増えて、集会室だけでは手狭になってきたので、近くに同じような通いの場ができて、輪が広がっていけばいいなと思っています。

最後に、石川さんにとって「健康」とは何か、また今後の目標についてお聞かせください。
石川

健康は財産(=自分だけの価値)です。健康であれば迷いなく「幸福です」と言えます。また健康であれば、高齢になっても医療費が少なくて済み、お金(年金)と時間を浪費しなくてすみます。健康への投資は、財産・資金を増やす投資と同じく、時間とお金を費やして、コツコツ続けるものです。

自治防災会会長としては、「Bousaiコミュニティマンション(防災意識が高く、コミュニケーションが活発で互いに助け合えるマンション)」と「アクティブChojuマンション(健康で活動的な高齢者が安心して快適に暮らせるマンション)」を未来戦略のキーワードに掲げて活動していきます。今から20年後に、気力と体力が充実した70~80代の住民が楽しみながら住環境や生活環境の未来を、若い世代とともに語り合っているコミュニティをつくっていきたいですね。

私個人としては、マンション住民全員と知り合いになること(笑)、「ありがとう」と言ってもらえることが目標ですね。感謝してもらえることは自分にとっての励みで、活動を続ける原動力にもなっています。更に自治防災会自体の活動が市や関係団体の方々に評価され、感謝状をもらえたら嬉しいですね(笑)。

インタビューを振り返って

本来の自分は人見知りで、中心になって何かをするタイプではなかったと語っていた石川さん。「なり手がいないから仕方がない」と理事長に就任し、自治防災会を立ち上げて今に至る、とお話されていましたが、穏やかな口調のなかにも「QOLを向上していこう」という強い情熱がうかがわれ、地域に石川さんのような方がいること自体が大きな財産であると感じました。

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