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プレスリリース

甲斐主任研究員が第28回日本健康教育学会学術大会で最優秀学会賞を受賞

当研究所の甲斐裕子主任研究員が、6月30日に東京大学で開催された第28回日本健康教育学会学術大会において、「住民による運動の場づくりは「運動格差」を縮小するか?」というテーマで最優秀学会賞を受賞し、深井穫博学会長(深井保健科学研究所)から表彰を受けました。
甲斐裕子主任研究員と深井穫博学会長

日本健康教育学会は、日本の健康づくりに関わる研究者や実践者が一堂に会する学会であり、健康教育やヘルスプロモーションの充実・推進およびその普及を図ることを目的として活動を行っています。今回の学術大会は、「健康教育・ヘルスプロモーションと健康政策-健康寿命の延伸に向けて分野ごとの短期・長期アウトカム評価をどう共有するか-」をテーマに行われました。すべての発表演題から6名が学会賞を受賞し(学術部門2名・実践部門2名・若手部門2名 ※甲斐主任研究員は学術部門の受賞者)、そのなかから最も優れた演題として、甲斐主任研究員が最優秀学会賞に選ばれました。

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甲斐裕子主任研究員 受賞のコメント


名誉ある賞を受賞し、大変光栄です。本研究は10年前に開始しました。当初は「何をやりたいかわからない」等と言われることもありました。しかし、10年経ち、平等と思われていた日本にも格差があることがわかってきました。そのため、本研究にも注目していただけたのかなと思っています。長期間にわたる研究ですので、自治体や住民の皆さまをはじめ多くの方々によって支えられました。心より御礼申し上げます。今後も、時代の変化をいち早くとらえ、社会的成果を生み出す研究を行ってまいります。

研究の概要


1.課題: 住民による運動の場づくりは「運動格差」を縮小するか?:地域介入研究
2.目的: 運動の場づくりというポピュレーションアプローチが、地域の高齢者全体の「運動格差」に及ぼす影響を検討すること
3.方法:
■対象地域:横浜市瀬谷区のモデル地区(介入地区・対照地区)
 ■介入内容:介入地区において2年間運動支援ボランティアを養成し、地域での運動の拠点(場)づくりを支援
 ■評価方法:郵送による連続横断調査
 ■調査対象:介入および対照地区に住む60~84歳の高齢者から各地区1,200名(合計2,400名)を無作為抽出
 ■調査タイミング:介入前、1年後、2年後、5年後
 ■主要評価項目:週2回以上の運動習慣者の割合
4.結果:
 ■介入地区では、地域全体の高齢者の運動習慣者が増加
 ■特に暮らし向きが「苦しい群」で運動習慣者が増加
 ■介入から5年後には、運動格差が縮小する可能性を確認

研究の背景


近年、健康格差が社会問題となっています。運動習慣などの生活習慣にも格差がありますが、それを縮小する方法は検討されていません。また、人口レベルでの行動変容を生み出すためには、集団全体に働きかけるポピュレーションアプローチが有効です。しかし、健康で豊かな人はますます健康になり、リスクの高い社会的弱者が置き去りにされ、むしろ格差が広がる懸念も指摘されています。そこで行政・住民・研究機関が連携したポピュレーションアプローチが、「運動格差」に及ぼす影響を明らかにするために、本研究を実施しました。

研究成果の社会的意義


「運動の場」づくりは、格差を広げることなく、地域全体の高齢者の運動習慣者を増やすことが明らかになりました。 むしろ格差を縮小できるかもしれません。運動は高齢者の認知症予防、介護予防等、様々な効果があります。しかし、どの自治体でも「何をやっても同じ人しか来ない(=格差が広がる)」「継続的な支援は難しい(=効果が出ない)」等の共有の悩みがあります。本研究成果はそれらのひとつの解決策となり、自治体における高齢者施策をすすめる上でのエビデンスとなることが期待されます。

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