公益財団法人 明治安田厚生事業団

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研究の紹介

競技スポーツ実践の場によりストレス対処力、メンタルヘルスに違いは見られるか?―学校サッカー部とJユースチームの比較―

概要


わが国では、学校運動部と民間・地域のスポーツクラブの両方がアスリート選手の育成に重要な役割を果たしています。これらの競技スポーツの実践の場の違いにより、心身の発達に及ぼす影響が異なる可能性がありますが、十分に検討されていませんでした。本研究では、運動種目としてサッカーを取り上げ、学校運動部とJリーグユースチームで、ストレス対処力や気分の状態に違いがあるかを横断的に検討しました。対象は、私立男子高校1校のサッカー部およびJリーグユース4チームに所属する1年生全員としました。分析の結果、サッカー部で優れた戦績のある生徒およびJリーグユースの生徒はストレス対処力が高いことが明らかとなりました。一方、気分の状態はJリーグユースの生徒がサッカー部の生徒と比べて良好でした。こうした知見は、効果的なアスリート選手の育成に役立つと思われます。

背景


競技スポーツでは、強い身体的負荷やパフォーマンスへの不安などの多様なストレッサーにさらされます。そのため、ストレス対処力を育み、メンタルヘルスを良好に保つことが重要です。わが国における競技スポーツ実践の場には、学校運動部と民間・地域のスポーツクラブがあります。学校運動部は教育活動の一環として行われますが、スポーツクラブでは学校とは異なる環境における競技力向上を目指した活動となります。このようなプレーの場の違いにより、ストレス対処力やメンタルヘルスに違いが表れることが予想されますが、十分な検討がなされていませんでした。そこで本研究では、青年期において最もプレー人口が多く、学校運動部とJリーグユースチームという代表的な2つの競技スポーツ実践の場があるサッカーに着目して検討しました。

対象と方法


対象


某私立男子高校に通う1年生の全生徒のうち、運動部に所属していない333名およびサッカー部に所属する108名
Jリーグユース4チームに所属する1年生全員51名



調査方法


高校の調査は、当該学校長の許可を得て保健体育の授業中に自記式質問紙調査票を用いて実施しました。Jリーグユースチームでは、各担当者の許可・協力を得て、練習前など全員が集まることができるタイミングで同様の調査を実施しました。
本研究で用いた主な項目は以下の2つです。

①ストレス対処力:首尾一貫感覚(Sense of Coherence; SOC)3項目スケール※1で評価
※1 SOC3項目スケール:「私は、日常生じる困難や問題の解決策を見つけることができると思う」「私は、人生で生じる困難や問題のいくつかは、向き合い、取り組む価値があると思う」「私は、日常生じる困難や問題を理解したり予測したりできると思う」という質問について、自分がどの程度当てはまるかを選ぶものです。


②気分の状態:Profile of Mood State(POMS)短縮版※2で評価
※2 POMS短縮版:過去1週間の気分に関する質問について、自分がどの程度当てはまるかを選ぶものです。緊張不安、抑うつ落ち込み、怒り敵意、活気、疲労、混乱という6つの下位尺度、およびそれらを総合したTotal Mood Disturbance(TMD)得点が算出されます。本研究ではTMD得点を分析に用いました。


結果


ストレス対処力は、サッカー部戦績あり群(中央値:16.0、四分位範囲:4.0-21.0)とJユース所属群(15.0、6.0-21.0)が、非所属群(14.0、3.0-21.0)に比べて高い値を示しました。一方、サッカー部戦績なし群(15.0、9.0-21.0)では、いずれの群とも有意な差が認められませんでした。これについて、サッカー部戦績あり群とJユース所属群はスポーツの経験年数が長く、全般的な成功経験の得点も高いという特徴がありました。競技スポーツ実践の場の違いというよりも、過去の豊富な経験が高いストレス対処力につながっていることが推察されます。



気分の状態は、Jユース所属群(10.0、-8.0-33.0)が、サッカー部戦績あり群(17.5、-20-74.0)と戦績なし群(22.0、-2.0-57.0)、非所属群(22.0、-16.0-77.0)に比べて良好な値を示しました。実践の場が異なることで、文化や環境の違い、また、練習状況の違い(主観的なきつさではサッカー部とJユースで同程度であったものの、練習日数はJユースが少なかった)などにより、気分の違いがもたらされている可能性があります。



まとめ


本研究では、競技スポーツの場にかかわらず、高い戦績を有する生徒はストレス対処力が高いこと、一方、Jユース所属者ではサッカー部に比べて気分の状態が良好であることが確認されました。このように、実践の場や各生徒の経験によってストレス対処力やメンタルヘルスに違いがみられるという知見は、それぞれの場における活動内容の見直しや生徒のサポートに役立てられることが期待されます。今後は、他の種目における傾向や、追跡調査データによる実践の場の違いによる影響などを検討していきたいと考えています。

題名:Relationship of athletic sports with sense of coherence and mood states in male senior high school students: comparing athletes from a school soccer club and J-League youth teams. (日本語訳:男子高校生における競技スポーツとストレス対処力、気分の関連性:学校サッカー部とJリーグユースチームの比較)
著者名:Takashi Jindo, Naruki Kitano, Kazuhiro Suzukawa, Shota Sakamoto, Shin Osawa, Yuichi Nakahara-Gondoh, Takeru Gushiken, Koki Nagata, Toshiya Nagamatsu.
書誌情報:Bulletin of the Physical Fitness Research Institute 2018: 116; 1-9.
掲載URL: https://www.my-zaidan.or.jp/tai-ken/research/bulletin/doc/bulletin116_01.pdf
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