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健康づくりウォッチ

糖尿病は悪性腫瘍(がん)のリスクを高める

日本では近年、生活習慣が欧米化し、高カロリー食、運動不足による肥満などにより糖尿病が増加しています。2018年「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が疑われる人は約1,000万人を超えています。

糖尿病の発がんリスク


糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病がありますが、2型糖尿病が最も一般的な糖尿病で、10人に9人以上はこのタイプです。若い人でも発症することがありますが、40歳を過ぎてから発症する場合がほとんどです。
糖尿病は、心臓・血管・腎疾患などさまざまな病気を引き起こします。また認知症のリスクが高まるという報告もあります。最近、2型糖尿病患者では悪性腫瘍(がん)に罹患するリスクが高まることが注目されています。
糖尿病の発がんリスクは、諸外国の報告例をまとめると、全体では1.10倍です。特に肝臓、子宮内膜、膵臓、大腸、膀胱、乳房、胃のリスクが高くなっています。前立腺だけは、逆にリスクが低くなっています(表)。

糖尿病だとなぜ悪性腫瘍のリスクが高まるのか?


糖尿病では、高インスリン血症、高血糖、炎症などが発がんに関与するといわれています。すなわち、体のなかで膵臓から分泌されるインスリンの作用が不足すると、それを補うために高インスリン血症やIGF-I(インスリン様成長因子I)が増加し、肝臓、膵臓などの部位における腫瘍細胞の増殖を刺激して、がん化に関与すると考えられています。肥満や運動不足によっても、結果的に高インスリン血症が引き起こされますので、肥満や運動不足と関連の強いがんでは、類似のメカニズムでがんにかかりやすくなるのかもしれません。高血糖が発がんに影響しているという報告がありますが、詳しいメカニズムはわかっていません。

予防するには…


減量(肥満者の場合)、運動、野菜たっぷりの食生活、禁煙、節酒などの健康的な生活習慣は、糖尿病の合併症を予防するだけでなく、がんを予防することにもつながります。がんは早期発見・早期治療などといわれます。通常の健診では、すべてのがんのスクリーニングはできません。また、腫瘍マーカーなどの血液検査だけでもスクリーニングはできません。がんの部位によって、スクリーニング方法は異なります。膵臓がんには腹部超音波検査が、大腸がんには便潜血反応が用いられます。特に血縁にがんの家族歴がある方は年1回の血糖チェックとともに、健診を定期的に受けることでがんを早期発見することができます。

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著者
内田 賢 Uchida Ken
一般財団法人 明治安田健康開発財団
新宿健診センター 所長 医師

専門 早期乳癌の診断、乳管内視鏡、乳癌の手術療法、家族性乳癌、乳癌検診
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